「ちょっと待ってくださいよ、
 それって…」

…思い出した。
引っ越す直前、大雨の日だった。
水かさのふえた川の迫力がすごいから
一緒に見ようって呼び出したら、
ドジって落っこっちゃって…
ちょっと下流に流されて、
カッコ悪いからそのまんま家に
戻っちゃったんだよ。

もしかして、もしかしたら、
オレを見殺しにしたと思って……
罪の意識のあまり、
牛鬼みたいに、「オレの魂」が
乗り移ったんだって自己暗示に
かかっちゃったんだとしたら…………

やっべ、執事さんの顔がどんどん
凄みを帯びて来たぞ。
「オレが偽物のオレで、本物はお前?
 訳わかんねーこと言ってんじゃ
 ねーよ!!」

天音はオレの言葉をはじめから
聞こうともしない。

どうしたらいいんだろう。
オレは---
自分自身の手で、大好きな女の子の
人生を狂わせてしまったんだ。
あの日のような大雨の日、オレは
天音を河原に呼び出した。

「天音……今の天音は
 『ユキちゃんに殺されたオレ』
 なんだよな」
「またその話か?くっだらねぇ、
 オレはオレだっつーの」
天音はオレを見てくれようともしない。

「……うん。わかってる。
 天音、ゴメン。本当にごめんな。
 
『オレ』はひとりでいいんだ

「……え?っちょ……バカッ!!!」

息をつめ、震える膝をおさえながら
オレは渦巻く濁流へ背中からダイブした。

まえ     もどる つぎ

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